母が家を整理していて、ワーカホリックだった父が僅かばかりに空いた時間に詰め込むように読んだ、あるいは、退職後に始めた詩吟やNPOの用事の合間に読んでいた時代小説の山を処分したいとのこと、誰も趣味を共有するものもいないので、50冊ばかりを、ためしに古本屋にもっていった。1冊10円くらいにしかならなかったのだけど棄てるよりはよかった。たとえ、中高年男性しか読まないファンタジーノベルのような読み物であっても、ゴミとして処分されて読むことのできない物質に変換してしまうのは寂し過ぎる。
査定している間、棚を物色したのだけど、不思議なくらい読みたい本が見つからない。
物足りない気持ちになったので、古本屋のそばのショッピングモールに出来た広々としていてオシャレなTSUTAYAに行ったのだけど、ここでも読みたいものがない。
とりつく島のない書店は、消しゴムのようにすり減ってしまった自分の鏡像なのではないかとも思え、賑やかなモールで自分だけが亡霊になったような気がした。