雑記

給料がでたので奮発して、マイルスのマイハァニーバレンタインを買った、といっても五百円だった。フリージャズ全盛の時代のはずなのだけど、マイルスは、コルトレーンとちがって、その動向には冷めていたのか、それとも文筆家が書き残しているほど、フリーは盛んではなかったのか、恐らくは両方なのだろう。無調の音楽の全盛時代、ジャズの観衆より洗練されたクラシックの観衆がどれだけそれに夢中になったかは、アドルノの書いたものを読んでいるかぎり、それ程のものでもなくて、故にアドルノも紙数を尽くさなければならなかったようにも思われるのだ。皆マイルスのすこし不器用なトランペットや黒子のやうにそれを支えるハンコックのピアノのほうが楽しめたとしても、違和感は感じないし、マイルスだってわざわざ学校をやめてジャズ音楽家になった甲斐があるというものだと思う。しかしいろいろな人がジャズについて文章をのこしているのだけど、文章は古びるのが早い、フリーにせよマイルスにせよ当の音楽はいまだ楽しめるのにどうしたものかと思う。