「霞ヶ関埋蔵金男が明かす「お国の経済」」高橋洋一

”結論を簡単に言うと、固定相場制のもとでは財政政策は完璧に効いて、金融政策は効かない。逆に変動相場制になると、金融政策しかきかなくて、財政政策は効かなくなってしまう。”

”変動相場制のもとでどうして財政政策が効かないか。財政政策をやるときには国債を発行して公共投資をするのが一番典型です。国債を発行して民間から資金を集めると金利が高くなる。
 金利が高くなると為替は円高になる。金利が高くなって円高になると、公共投資をして内需を増やす一方で、円高になるから輸出が減る。そうすると公共投資の増が輸出減で相殺されちゃう。
 輸出減の一方で輸入が増えるということは、他国の輸出増になるわけでしょう。要するに公共投資の効果は他国の輸出増になっちゃうんです。
 変動相場制のもとでは金融政策がなぜ効くかというと、金融政策は金利を下げて受容を増やす。金利を下げるから、為替が円安になって、輸出増になるわけ。だから、金利を下げると設備投資の増加もあるし輸出増にもなるから、けっこうそれなりに効くわけです。”

 しかし、金利が安くても国債は売れているのではないかという気がしないでもないのだけど、それは置いておくとして、

 私のような素人むけに書かれている本で、素人(なんといっても、”高校一年生〜財務官僚、日銀マン向き”)に対して、こんなことは”常識”なんだよと語るその語り口には、いらだつこともあるのだけど、とても分りやすい本で、選挙も近そうな今、もっと多くの人に読んでもらいたいと思う。そして、この内容は踏まえた上で、選挙前の議論が行われるよう期待してみたくなる。
経済学の言葉をとおしてしか見えてこない世界のヴァージョンというものは確実に存在するように思う。このことは、柄谷行人のような批評家が、”1990年以降、「社会主義」圏が消滅すると、福祉国家への動機がなくなった”(「世界共和国へ」)としか説明できなかったことを考えると、瞭然であるように思う。