日記

 近所にある由緒ありげな真言宗のお寺の立派な南大門、とは言っても一層建ちの八脚門なのだけど、その脇に、いつの間にやら布にくるまれた像が二体ならんでいる。くるまれながらもそのアウトラインで、仁王像であろうと予想しているのだけど、いつになっても布が解かれる様子はない。
もともとは、全表面に張りこまれていたであろう金箔が剥げ、所々に斑上にしか残っていない蓮の葉と花が、その大きな屋根のおかげで昼間でも薄暗い空間におかれていて、通りすがりにつねに視界の隅で覗かせていただいていたつもりなのだけど、それが視界の隅にあったものとして思い出されるのは、模した植物の形状のせいかもしれない。あるいは、しっかりと視界の中心に添えて、隅々までその像を眺めたこともあったのだろうとも思っている。

 今日は、朝から太鼓の音がドンドンと聴こえて、しかし太鼓の音の高さとか響き具合というものは、何故に警戒心を起こさせて、気持ちを落ち着かなくさせるのだろう、まるで、殻をむしりとられて宇宙の片隅に投げ出された蝸牛になったかのような落ち着かない気分になってしまった。
しかし、あの太鼓が仁王様のお披露目のために打ち鳴らされているものかと思うと、楽しみな気分にもならないわけでもないのである。