湯島を皮切りにして、糸の切れたタコのように画廊をフラフラと歩き回った。スマホとグーグルマップのおかげで、行きつけていない画廊に簡単に到達出来て、世の中便利になったものだと思う。おかげで「ぴあ」や「ETC.」がなくても複数の画廊を覗きながら京橋から新橋まで歩くことが出来た。こんなことを書くと「ひやかし」ととられるかもしれないのだけど、画廊に展示してある作品は必ずしも売り物であるわけでもなく、それ以前に視るための何かであったりもする。そこから、所有とか私有の話になってくると、ややこしくなってしまって困りものなのだけど。

 そういえば、以前は芳名をするときに頁を捲って、夢や希望を共にした仲間や、背中を追いかけていた諸先輩や賢い批評家の名前を確認していたのだけど(散歩中の犬が電信柱の匂いを嗅ぐように)、今日はしなかったということに、今、気がついた。