・外光派の筆触分割が次世代において、例えば、遠くから見たら像がみえるが近くから見たら全く他のものに見えるように描いてあるといった、ある意味、騙し絵的な作意を醸し出しているときに、ある種の失望感を持つのだけどどうしたことなのだろう。奥行きばかりが大問題というわけでもないだろうに。
サリンジャーの小説が魅力的なのは、社会において、排斥されがちな病をかかえた家族の話を家族の側から描いており、不幸にして理解を得られぬまま自死した長兄もいたりするが、彼以外はその危機を兄弟のちょっとした手助けで乗り切っており、また、現実のアメリカではそのちょっとした手助けが行われず、多くの悲劇的状況があったがためではないかと思われる点にあったりする。