日記

bookoffでキタイの画集を700円で購入。

浪人時代に池袋だの銀座だのの洋書屋で画集を覗いたことのある画家で、要は美大の入学試験というのはあくまでも具象絵画で行われるということで、同時代で参考にできる絵はないかと捜すと行き当たる数人の画家の一人だったのである。他はバルティスとかクレモニーニなんかが人気(?)があって、予備校の先輩浪人生の下宿に行くとここらの画集があって、自分も欲しいと思って洋書屋にいくのだけど、値段が高くてなかなか手が出なかったことを覚えている。きっと、私より少し年齢が下がると、リヒターなんかがこれに加わるのではないかと思う。

更に、個人的な思い出としては、画材屋でバイトをしていた時に、芸大出で既に筆を折っていて、絵については皮肉交じりのことしか言わない店長の口から、ポロリとこの画家の名前がもれたことがあり、軽く驚いて店長の顔を見つめてしまった時に、店長が見せた無邪気な笑顔なんてものがあったりする。

コラージュから描き起こしたかのような混乱した空間、一見ドライに見えるのだけど微妙にニュアンスをつけて塗られる色面やら、一見ぶっきら棒に見えながらしっかりと抑制されている筆触やら、一見不器用そうにみえて実は達人という感じで、限られた条件のなかで果敢にアクロバットをしている感じが浪人生の自意識に妙にフィットするということだったのだろうと今にして思う。
ホックニーも似たような作家であるのだけど、意図的にも思える一見の拙さが浪人生には許せなかったというか、許されなかったのではないだろうか。