部屋の隅、タンスの上、あちらこちらに積み上げられたり、押しこまれたりした絵を昼間に引っ張リ出してチェックをしていたら、一枚だけ白の色がしっとりとして落ち着いているものがあった。使った筆、或いは練った油や樹脂の違いかと思いつつ、同じ感じに描けないものかと絵の具を練り直して試し描きをしつつも再現ができないまま日がたっていたのだけど、鉛白の顔料を練ったら同じ感じが出せた。高校生の頃は無理に使わされていた顔料なのだけど、毒性が強いことと、混色したとき明度が上がらないような気がすることより、二酸化チタン白に切り替えていたのだった。こんなにも違うものかと改めて思った。イタリアやドイツ、フランドルの古画に使われているのは鉛白であることは知識レベルでは当然のこととして知っていた、それが突然、感覚レベルで繋がる感じが不思議だ。